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武蔵野文学賞

 【武蔵野文学賞とは】文学を志す学生から「この賞があるから武蔵野大学へ進学した」という声が聞かれる武蔵野文学賞(1992年創設)。2011年に高校生部門を開設し、高校生が創作活動に取り組むきっかけをつくること、また若き才能発掘の一助となることを目指しています。これまで高校生部門は小説だけでしたが、選考者に井上弘美(NHK俳句選者)を迎えて、新たに俳句作品も募集します。

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第8回高校生部門 最優秀賞・優秀賞

2019年7月1日(月)~8月30日(金)の期間に募集した「第27回武蔵野文学賞」の「第8回高校生部門」には40件の応募作品がありました。選考委員による厳正な審査の結果、最優秀賞1名、優秀賞3名が選ばれました。

第8回高校生部門 受賞作品一覧

最優秀賞
小説「Memento」  史 浩安 さん  渋谷教育学園幕張高等学校 2年

<受賞作品講評> 選考委員 武蔵野大学名誉教授 三田 誠広

 高校時代に男子2名女子1名で海辺の民宿に行く経過が重厚な描写で語られる。細部がきっちりと押さえられているので語られる世界に現実感がある。しかし物語の終盤に到るまで何ごとも起こらない。やや退屈な展開ではあるのだが文体の緊張感で読者を最後まで引っぱっていく。やがて突如としてカタストロフが生じ、物語の数年後という設定の前後の枠の部分が、作品の世界に奥行きをもたらしている。必要以上に主人公の心理を語らない抑制された文体に特色があるのだが、少し抑えすぎていているようにも感じられる。過剰にセンチメンタルになる必要はないが、ヒロインの感性をもっと見せてほしい。

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※受賞者の所属や学年は受賞当時のものです。

優秀賞
小説「青のペンキ塗りがソコにいた」  野尻 晃生 さん  千葉県立津田沼高等学校  1年

<受賞作品講評> 選考委員 武蔵野大学名誉教授 三田 誠広

 数年前に祖父が亡くなりいままた祖母が亡くなった。葬儀に出向いた主人公が、祖父母の家の近くの橋の下で作業をする不思議な人物と遭遇する。大小さまざまな黒い物体に青いペンキを塗って川に流すという作業をひたすら続けている、この謎のおじさんの存在感が、作品に不思議な余韻を残す。この人が何ものでこの作業が何のためのものなのか、最後まで明確な説明はないのだが、人を失った悲しみと関わっているということは伝わってくる。あまり説明しすぎないところが、この作品の特色で、効果を上げているようにも思うのだが、主人公のキャラクターにもう少し工夫があってもよかったかなと思われる。

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※受賞者の所属や学年は受賞当時のものです。

優秀賞
小説「放課後の延長線上」  杉山 梨奈 さん   群馬県立太田女子高等学校 2年

<受賞作品講評> 選考委員 武蔵野大学名誉教授 三田 誠広

 幻想的な雰囲気をもった不思議な図書館の話。この図書館の設定がおもしろい。現実には存在しない図書館なので一種のファンタジーなのだろうが、図書館の細部にもいろいろと仕掛けがあって、読者はその不思議な世界に誘い込まれていく。図書館のどこかにある秘密の宝箱。現実世界のいざこざに巻き込まれ傷ついた主人公が、やがてその宝箱を発見する。果たしてその宝箱の中に何が入っているのか。そこにも幻想的な仕掛けがあって、読者を最後まで飽きさせない。作者が設定した作品の世界観が、夢のような話に確かな実在感を与えている。

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※受賞者の所属や学年は受賞当時のものです。

優秀賞
小説「ドアノブ」  小濱 賢太 さん   筑波大学附属駒場高等学校 3年

<受賞作品講評> 選考委員 武蔵野大学名誉教授 三田 誠広

 複数の視点で語られ、そのつど謎が解き明かされていくという手法が楽しめる。とくに最初の視点が、ネコの語りになっているということが、次の「お兄ちゃん」の視点になった時に明らかにされるくだりは、仕掛けがうまく機能している。ネコだけが留守番をしている時に、怪しい人物が侵入して、開かずの間となっている物置から、絵を一枚盗みだし、さらに外れていたドアノブをつけていく。この犯行の謎がやがて明らかにされていく展開にはそれなりのおもしろさがあるのだが、謎解きに終始して、登場人物の個性や人間性が充分に描かれていない点が惜しまれる。

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※受賞者の所属や学年は受賞当時のものです。

武蔵野文学賞 デジタルアーカイブス